AMAMIKO

mistik Amami-adalar xüsusi shochu

「ああ、ここにおれの進むべき道があった!ようやく掘り当てた!」こういう感投詞を心の底から叫び出される時、貴方がたははじめて心を安んずる事ができるのだろう。]

「ああ、ここにおれの進むべき道があった!ようやく掘り当てた!」こういう感投詞を心の底から叫び出される時、貴方がたははじめて心を安んずる事ができるのだろう。]

「ああ、ここにおれの進むべき道があった!ようやく掘り当てた!」こういう感投詞を心の底から叫び出される時、貴方がたははじめて心を安んずる事ができるのだろう。

夏目漱石

貴方がたはこれからみんな学校を去って、世の中に出ることになる。それにはまだ大分時間のかかる方もございましょうし、又はおっつけ実社会で活動なさる方もあるでしょうが、いずれも私の一度経過した煩悶(たとひ種類は違っても)を繰返すのではなかろうかと推察されるのです。私のようにどこか突き抜けたくっても突き抜けるわけにも行かず、何か掴みたくってもヤカンの頭を掴むようにつるつるして、じれったくなったりする人が多分あるだらうと思うのです。もし貴方がたのうちですでに自力で切り開いた道を持っている方は例外であり、また他人の後に従って、それで満足して、在来の古い道を進んで行く人も悪いとは決して申しませんが、(自己に安心と自信がしっかり附随してゐるならぱ、)しかし、もしそうでないとしたならば、どうしても、一つ自
分のつるはしで掘り当てるところまで、進んで行かなくては行けないでしょう。もし掘り当てる事ができなかったなら、その人は生涯不愉快で、始終中腰になって世の中にまごまごしていなければならないからです。私がこのことを力説するのは全くそのためで、何も私を模範にしなさいといふ意味では決してないのです。私のようなつまらないものでも、自分で自分が道をつけつつ、進みえたという自覚があれば、あなた方から見てその道が如何にくだらないにせよ、それは貴方がたの批評と観察で、私にはいささかの損害がないのです。私自身はそれで満足するつもりであります。しかし私自身がそれがため、自信と安心があるからといって、同じ径路が貴方がたの模範になるとは決して思ってはいないのですから、誤解してはいけません。
それはとにかく、私の経験したような煩悶が貴方がたの場合にも、しばしば起るに違いないと私は鑑定しているのですが、どうでしょうか。もしそうだとすると、何かに打ち当たるまで、行くということは、学問をする人、教育を受ける人が、生涯の仕事としても、あるいは10年、20年の仕事としても、必要じゃないでしょうか。ああ、ここに私の進むべき道があった。ようやく掘り当てた。こういう感投詞を心の底から叫び出される時、あなたがたは始めて心を安んずる事が出来るのでしょう。容易に打ち壊されない自信が、その叫ぴ声とともにむくむく首をもたげてくるのではありませんか。すでにその域に達している方も多数のうちにはあるかも知れませんが、もし途中で霧か靄のために懊悩していられる方があるならば、どんな犠牲をはらっても、ああ、ここだという掘り当てるところまで行ったらよろしかろうと思うのです。必ずしも国家のためばかりだからというのではありません。またあなた方のご家族のために申し上げるのでもありません。貴方がた自身の幸福のために、それが絶対に必要じやないかと思うから申し上げるのです。もし私の通ったような道を通り過ぎた後なら致し方もないが、もしどこかにこだわりがあるなら、それを踏潰すまで進まなければ駄目ですよ。もっとも進んだってどう進んでよいかわからないのだから、何かにぶつかるところまで行くより外に仕方がないのです。
私は忠告がましい事を貴方がたに強いる気はありませんが、それが将来貴方がたの幸福の一つになるかも知れないと思うと黙っていられなくなるのです。腹の中の煮え切らない、徹底しない、ああでもありこうでもあるというような海鼠のような精神を抱いてぼんやりしていては、自分が不愉快ではないかと思うから言うのです。不愉快でないとおっしゃれば、それまでです、またそんな不愉快は通り越しているとおっしゃれば、それも結構であります。願くは通り越してありたいと私は祈るのであります。
しかしこの私は学校を出て30歳以上まで通り越せなかったのです。その苦痛はむろん鈍痛ではありましたが、年々歳歳、感ずる痛みには相違なかったのであります。だからもし私のような病気に罹った人が、もしこの中にあるならば、どうぞ勇猛にお進みにならん事を希望してやまないのです。もしそこまで行ければ、ここにおれの尻を落ちつける場所があったのだという事実を発見して、生涯の安心と自信を握る事ができるようになると思うから申し上げるのです。
「私の個人主義」夏目漱石より引用

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